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[しがみつく童に瞬いて]
泣いておるからじゃ。
あまり暴れると目玉舐めるぞ。
舐めたら開耶も目玉喰ろうてしまうかのう。かっかっか。
[胡坐に収まる開耶の頭撫でる]
[ぴたりと止まる薄紅の袖。
藍の浴衣掴んだままに暫し固まり]
[やれと息吐き目元を擦りて]
盲になるは困る。
…いや困らぬのか?
所詮我は生きてはおらぬ。
[右の手ゆるり唇なぞり。
左は未だに藍衣掴むまま]
喰児も隅に置けないネェ。
[金色覗き] [双眸は弧を描く]
[近付けば薫る赤と黒] [常葉に落ちる唇]
嗚呼、喰児は喰いでがありそうだネェ。
残さず喰うなァ大変そうさァ。
全部残さず喰ろうてお呉れかえ?
血肉に成るなァどっちかネェ。
[囁く声] [甘く] [薫り] [すぃと身を引き]
[紅い髪ひと房] [そぅと持ち上げ] [薔薇色の唇に寄せ]
楽しみにしておくヨゥ。
[上目遣いに覗き] [身を離し][番傘くるうり]
[踵を返し] [しゃなしゃなり] [下駄の向く侭] [*気の向く侭*]
[立ち直れないなりに、方向性考えますか。]
どうしようかのぅ。
壊れて殺戮するのがぱっと浮かんだ。
[まあ、まて。じっくり考えるんだ。]
さて、魂相手に試した事ないからわからぬわ。
[涙拭う様子に由と頷く]
もしも成れば困るのならば、
ぽろぽろ泣かねば良い。
泣いても笑えば良い。
[浴衣掴む小さき手にゆると笑んで]
時にお前さんは桜の精であったか?
[弔いの祈りを終え、遥月は立ち上がって辺りを見回した。一陣の風が舞い、遥月は思わず目を細める。]
……司棋様……。
[夜斗に守られ静かに眠る司棋に歩み寄り、傍らに座った。遥月は心配そうに司棋の顔を見つめ、その頭を撫でた。]
嗚呼……司棋様。
貴方様には、この光景は畏ろしゅう御座いましたか……。
わたくしの呪いは、異形の中でも揶揄され石を投げられるもの……。まして誰かに抱かれるのが初めての貴方様にとっては……
[ふるりと首を横に振り、いたわるように司棋の掌に己の掌を添えた。]
司棋様……温かい……。
嗚呼、生きている……!
[傷ついた司棋の右手をそっと手に取り、優しく口づけた――*]
やれ…其方はいつも笑えという。
我が笑わずとも他が笑って居よう。
[するり左手滑り落ち。
なれども膝から降りるもなく]
ああ。我は薄紅の桜よ。
人の里に攫われて、柵に囲われて在る。
…嗚呼、今頃は切り倒されておろうな。
[宴のない社は不気味なくらい静かで――]
[否、毎夜騒々しい方が恐らくは異質なことなれど]
[妖しも酒もない場所では]
[些細な音も僅かな香りも] [風が運んできてしまう]
墨の香り――青司か?
[顔をあげれば涙を拭い]
[近くにいるのかと歩を進め]
[香りが少し濃いような]
[この血の香りは誰のものか]
[其れも深くは考えず]
泣く顔より笑う顔の方が好きなだけじゃ。
他が笑うておるのはその誰かの笑い顔であろう。
己はお前の笑う顔も見たいだけよ。
ふむ、そうか。人里で見かける桜
あれは山から攫うてきたものもあるのか。
[続く言葉に眉根寄せて]
何故桜を切り倒すのじゃ。
桜折る莫迦と云うに。
からかうなぃ。
[肩を竦めて碧を見遣り、
続く言葉にふふりと笑んで]
俺を喰いきるのは大変だろうなあ。
腹ぁ一杯になるだろうがねえ。
碧を残しちまうなんざぁ勿体ねぇ。
さあ、鬼ごっこ次第さ。
[緋色の髪に口付けた
薔薇の唇弧を描く]
ああ、俺も楽しみにしてるさあ。
[もういいかい、
もういいよう。
節をつけて口ずさむ。
櫻の木の幹凭れては、相棒に手向けの酒注ぐ]
…やれ、厄介な。
我は笑い方なぞ忘れてしもうたわ。
[体傾け青司に凭れ。
ゆるり目蓋を閉じて俯きつ]
…咲かぬ桜など要らぬだろう。
我が狩られておる以上、直に枯れもする。
[そぅと藍衣触れ僅か掴み]
……青司。
今だけで良い、…暫しこのままで在ってくれぬか。
笑い方なぞ覚える忘れるのものではなかろう。
忘れたと思っているだけかもしれんの。
[体預ける子供をあやす様、
手は長い髪撫で下ろして背も撫でる]
枯れてしまうのか…残念よ。
切り株からひょっこり芽でも出さぬかのう。
[浴衣掴む手に、見下ろして笑む]
良い。このまま此処に居れ。
[カラリコロリと下駄は響いて]
[薄い笑みたたえて桜の下に赤を見つける]
喰児か――墨の香りがした気がしたのじゃが、
どこぞに青司は――……
[詰まる言葉]
[倒れ伏す藍色を暫し見つめて]
[現実を拒むかのように]
[震える声で言葉を紡ぐ]
――……なんじゃ、青司。
飲みすぎで、つぶれたか……
嗚呼、万次郎の持ってきた酒でも、飲んだかの……
[そうでないことは一目で知れて]
[それでもそうとしか声はかけられず]
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