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ふふふ、そうとも。
これが本来のわらわじゃぞ。
あれほど高くより飛び降りようとも…
[顎持ち上げて、大木見上げ]
尻餅つくでなく、受け止められるのみにも非ず、ひらりと着地。
万次郎にも見せたかった。
[何ぞ面白いものをと問われれば]
3つほどな。
紅の穢れを泉にて落とす白水、番傘紅に染め踊るように屠る常磐のひめ、眼閉じるまでは働き者よと見ておった。
そして傑作がな、遥月に苛めらるる司棋の奴めよ。
今もきっと社にて…
[社を指差すが、木から下りた己の高さではもはや目は届かず]
おや、見えなくなったが…今もきっとな。
遥月…さ…
よかった…戻った…
[普段に戻る遥月に安心し、かくりと膝を付き。
緊張感が解けたのか、一瞬意識を飛ばし。
夜斗は倒れて頭を打たぬよう、主人の体を支え立ち]
よう、相棒。
[いつものように挨拶し
にいと笑みを浮かべては]
喧嘩売られりゃあ買わねぇとなあ。
碧に?
こんなん持ってたら怒られちまわぁ。
そう謂やァ命の姐さんは御猫様の化身だったけネェ。
万次郎の兄さんと謂やァ、命の姐さんは万次郎の兄さんと酒呑んでから随分と寝こけてたみたいだけど大丈夫かえ?
[小首傾げ] [くるくる変わる表情] [見詰め]
白水の姐さん鬼ごっこかネェ。
アタシも見られちまったかィ。
カマイタチ一匹くらいじゃ腹の足しにもならなかったヨゥ。
司棋の兄さんと遥月の兄さんは来る道中でちらっと見かけたヨゥ。
なンぞ様子が可笑しかったが、大丈夫かネェ。
[すぃ] [命の視線追い] [首を捻り]
……司棋様?
[意識を飛ばして地に崩れ落ちる司棋が視界に入る。夜斗が司棋を支え頭を打ち付けることは免れたが……]
司棋様……司棋様!
嗚呼……大丈夫ですか……?
………っ。
わたくしも、眩暈が……!
昨夜はすまなんだなあ、
少しばかり迷子になって適当な所で転寝しておったわ。
――それ、侘びじゃ。
[瓢箪ひょいと赤鬼投げて]
ああ、常葉のあれは舌が肥えているか。
小娘の臓物は気に入られたか?
[梢にて、独り静かに酒を呑み、]
[はた物思いに沈んではつく吐息。]
[今また、瓢を傾ければ、]
…やれ。もう無いか。
[空の瓢にこの度は、憂いで無い溜息。]
なかなか帰ってこねぇと思ったら
転寝かい、
襲われなくてよかったなぁ。
[くつくつ笑って相棒見遣り]
ああ、こんなんじゃ足りねぇって謂われらあ。
あれは随分気に入ったようだぜえ。
綺麗に平らげてたさあ。
んんン…
[真理が傾げる小首にも似た角度で、首を傾げ返し]
わらわは、それはそれはもうたっぷりと眠っておったようじゃからのう。
浅い眠りの中身を起こそうとした時は、ずいぶんと具合の悪くなった気のする。
万次郎のくれた酒のあまりの美味さに、夢中で飲んだ事は覚えておるが…。
頭の痛くなるものとは、知らなんだ。
じゃがもちろん、今はすっかり治っておる。大丈夫。
…ほほ、カマイタチ一匹くらいじゃ腹の足しにもならんと仰るか。
その細い指で小さな口を通って、華奢な胴まわりまで多くを運ぶとは到底思えぬのに。
常磐のひめは、見た目に違って大喰らいかのう?
喰児とどちらが多く喰らう?
殺気あればすぐわかるて。
お前さんらも血の匂いをさせすぎじゃ、かっかっか。
ほう。気に入れど足らず。
足らねば何を望むかのう。
刹那刹那と云う割りに、未だ未だと云うてかなわん。
相棒はあれの何処を好いておるのか?
う…
[一瞬の気絶だったからか、直に目が覚め。
自分の上の遥月を見やり]
なんだったんだろう…、どうして…?
…怪我はない…か。
[じぃ、と眠る遥月を見つめてぽつり]
僕も、貴方が好きですよ?
[先程の言葉を、もう一度。
昨日、彼が自分にしていたように優しく髪に触れながら]
夜斗、皆の所へこの人を。
[自分はふらりと立ち上がり。眠る遥月は夜斗に担がせ、社の方へ]
ははあ。そりゃあそうかい。
まあ染み付いたもんだからなあ。
[ついと金の眼細めては]
未だだよう、と謂うのみだなあ。
魂が欲しいとさ、それも甘露なやつだぁな。
気に入るのに理由が要るか?
なあんてな。
見て聞いて触れて呑んで、
在り様が気に入ったのさぁ。
佳い女さあ。
[どさりと覆い被さり、しばし司棋の温もりを衣越しに感じ、司棋の身体を抱き締める。]
う……っ、
『はづき』は、わたくしの名……!
[ふるりと首を横に振り、よろよろと起き上がる。]
申し訳ございません、司棋様。先ほどは失礼の程を……
[夜斗がこちらをじぃと見つめているのを、遥月は思わず見つめ返した。]
……別に、今すぐ取って食らおうとなどとは。
[信用ならぬ、と言わんばかりの表情で、夜斗は遥月を見つめている。]
二日酔いかネェ。
治ったンなら何よりさァ。
酒は呑んでも呑まれるなってネェ。
[微か薫る薄紅] [黒鬼の気配] [またゆるり視線移し]
[命の言葉] [大喰らいと謂う] [コロコロコロリ] [軽やかに笑い]
カマイタチァ喰っちゃいないヨゥ。
弱い奴ァ不味くて喰う気になれないのさァ。
紅ァい紅ァい綺麗な血が見れる以外は足しにもならないヨゥ。
有塵め。
雅な現れ方で目を愉しませてくれると思えば、二言目には「酒くれ、酒くれ」と…
おぬしは、酒のためだけに生きておるのか?
さては真のところ桜鬼などではなくて、酒の入れらるる瓢箪の精であろ。
どうじゃ、当たり?
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