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そちらが万次郎様、こちらが青司様……。
承知致しました。
万次郎様、「紅の君」とは、もしやわたくしのことでございましょうか……?
[ちらと月を気に掛ける者を一瞥し。
名を呼ばれれば紅に向き合って、す、とあぐらをかく]
…名を盗み聞きするとは、不躾な。
其方も名乗れ。
[仏頂面で隻眼の男を見据え、独り剣呑な雰囲気を纏い
カタカタ、と脇の双刀の鍔が鳴る]
ああ、そっちかい。
こいつぁ失礼。
[真理に笑って眼を細めたままで]
まぁ適当に呼ばせてもらわぁ。
碧なんてどうかねぇ。
ま、満足してるようだし其の時々さ。
[ふと夜空に眼を向けて、
伺うように風を詠む]
そぉいや何かさっきまた
黒い影みたいなん来てなかったかぁ?
まだ賑やかになるのかねぇ。
[歓迎歓迎、謂いつつ笑う]
盗み聞きといえばわたくしもですね。たいへん失礼致しました。
……わたくしの名は、遥月。
紅を纏うは、世を忍ぶ姿故のこと……。
以後、御見知り置きを。
――では、妾も同罪か。
[くすり][くすくす]
[喰児を見据える万次郎へと柔らかな笑みを向け]
聴こえたものは仕方がない――
妾も名乗ろう……白水と。
あちらこちらで子供子供と云われておるのか。
それは悪かった。かっかっか。
左様、しかし主様の大事な祭りの前には慣れておくのがよかろうて。
へべれけでは見咎められてしまうぞ?
呑まれぬ程度にたしなむと良い良い。
[空になった杯を咥え、悪びれもなく司棋の背を叩く。
白が首を傾げると、ふむと顎を撫でる手のなかに杯を落とす]
そうかそうか。
呉れたものだ水へ還すのもまたよかろうて。
礼なぞいらんわ……ふむ、酌のひとつでもしてもらおうかの?
[腰を下ろして、杯を指先でくるりと回し
帯刀の男を見れば、常葉の女とのやりとりに首を傾げる]
[黒の杯は満たされて。
真理の問い掛けに、それを一口含んでから重く口を開き]
彼奴ら―――人間(ひと)の事だ。
我ら異形を、根拠も無く忌み嫌う輩。
我は彼奴らが好きではない。
[また一口。すうと喉に吸い込まれ、黒の杯は空になった。
再び別方向から名を呼ばれればゆると首を振り]
其処の不躾な隻眼の輩の事だ。
………其方は?
我は、知っての通り万次郎と名乗っておるよ。
[対照的に剣呑さを引っ込めて名を尋ねた]
はは、そう殺気を振りまくなぃ。
其の双剣は安いもんじゃぁないだろう?
[やはり笑みは浮かべたままで、
髪結上げた男に向き合う]
俺ぁ喰児。
好きに呼ぶがいいぜ。
はは、呑めるやつぁいいねぇ。
林檎飴と藍を混ぜたら茄子色サァ。
酒を零すなんざァ勿体無い事はしないヨゥ。
[コロコロコロリ] [笑う声軽く] [トプトプトプリ]
[満ちる紅い杯] [倣い喰児へ] [碧の眼差し向けて]
茄子の兄さんが林檎飴を奢って呉れるんだヨゥ。
でも打つには運が無いから何時になるか判らないのさァ。
遥月に、白水……。
[それぞれを見比べ首を捻って]
その名で呼ばずとも構わぬか?
我はどうも…先も香の君に言われたが
他への好奇心が欠けているらしい、故に。
しかし夜斗の方もわっぱのようだの。
かっかっか。
[眠りこける夜斗を見て、紅の大男にカラリと笑う]
やれやれ、どうも名乗りを上げる場のようだ。
ひとつ俺も名乗っておこうか。
[名乗る者に習い]
名は青司。好きに呼ぶと良い。
何かの縁だ、ひとつお見知りおきを。
そういえば僕も名乗っていなかったでしょうか?
今は酒が入っておりますゆえ暫しつむりが朦朧と。
司棋と申します。
[真理の林檎飴、の一言に]
あれは…僕が頂いてしまったからでしょうか?
青司様がまた取ってくださるならぜひ僕の分も。
美味しかったのですよ。
[青司から背を叩かれ、手の杯の酒を意図せずしてすべて飲み干し、盛大に咽る]
げほっ!な、何をするんですか…!
――酌、か。
[くすくす笑う] [愉しそう]
酌をするのは初めてじゃから、
何ぞ失礼があったとしても責任は持てぬぞえ?
[青司の横へと寄り添えば、首を捻る万次郎に]
如何様でも――。
妾にとっては相手を識別するために用いるものじゃ。
語らうだけなら相手が判れば何でも良い。
[香の君はわからねど。
そういう者がいたのかと、思うはただ其れだけ。]
当たり前だ。
其方を斬り捨てるには勿体ない程にな。
…赤鬼殿。
[くつくつ]
そうなると、青司殿は青鬼か。
悪くない取り合わせよ。
[肩を震わせひとしきり笑い]
司棋の兄さんは可愛いからネェ。
悪気は無いけどつい頭を撫でたくなるんだヨゥ。
[司棋を見詰める碧] [柔らかに弧を描き]
そうして拗ねるから可愛いのさァ。
[喰児の言葉] [一つ頷き] [揺れる常盤色] [薫る白粉]
何でも好いヨゥ。
誰かがアタシを呼んで呉れたなら、そン時振り返れれば充分さァ。
碧にしろ常葉の君にしろ随分と立派な名じゃないかえ?
貰えるんなら有難く貰っておくヨゥ。
[万次郎に向き直り、紅色の目尻をそっと閉じた。]
ええ、構いませんよ。
元よりこの名はさる方から戴いた仮初の名……。他の名でお呼びになりたいのなら、どうぞ。
[そして、青司に対して]
ええ……どうやら名乗る場のようで。
わたくしは遥月。以後よろしゅう。
青司様は随分と、皆様と仲が良ろしいようで……。
やれやれ、奔放なのは良いがまあ。
己と林檎飴は切っても切れぬか。
茄子でも茄子色でも好きに呼べ呼べ。
[コロコロと笑う常葉の女に半目を返し]
奢るまで強請る気か。
一口で勘弁するのは昨夜の話か?
[苦笑を浮かべる]
なるほど。狗連れの司棋殿とな…。
まだ、酒を嗜むには早いように見えるが、この姿故か?
其方の真の姿は……まあいい。
[白水へ視線を向け]
ならば、白の君と。
我にも酌をしてもらえるとありがたいのだが、よいかな?
久々の宴ゆえに、この味も懐かしく感じる。
[手元でくるりと杯を回した]
司棋……様。
そう一気に御酒を召されては……。
[司棋に近づき、そっと背を擦る。]
……大丈夫ですか?
御見受けするに、御酒は慣れていらっしゃないご様子……。無理はなさらず、お水を飲まれてはいかがですか……?
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