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[ふと眼が合うのは隻眼の
先程夜斗がうなっていた主。
改めて様相を見れば確かに犬でなくとも警戒するか
彼の人の呟きは聞こえる訳もなく]
…ここは挨拶をしたほうが…いいのかな?
夜斗、昨日の人たちとはまた打って変った怪しい人がいるねぇ
[面白そうに少し笑い]
[涼やかな声、耳に止めれば鮮やかな翠が広がって]
これは…どうも。
またお会いできるとは。
これは…僕の連れ。大人しいいい子ですよ
[夜斗はまた足元へ懐く。
...はそのまま翠の髪に眼をやって]
髪挿した華は枯れましたか。
貴女が望めば何時までも綺麗に咲く華なのに。
どうやら貴女も刹那がお好みのようだ。
また、咲かせましょうか?
[にこやかに返事をし]
………ふふ。
たしかに、遊び女と仮初の恋とやらを試したと言い訳もできましょう……。ですが、どちらにしろ…女の方を納得させる言い訳にはなりますまい。
呉れ呉れも、わたくしの紅は、貴方の身体だけにお刻み下さいな…。心に刻んではいけません……そう、決して。
[下駄を微かに鳴らし、遥月はゆっくりと歩き出した。背後の男から一歩、また一歩遠ざかる。そして振り返り、男に言葉を掛ける。]
……ええ。貴方がわたくしに逢いたいとおっしゃるなら、どうぞいつの夜にでも。この境内でお逢いしましょう……
[それだけ残すと、遥月は祭囃子の響く雑踏へと紛れ込んだ。]
[常盤色の髪揺らし、女の笑いは艶やかだ。]
はは、そういうそっちもそうなんだろ?
難儀だな、難儀だねぇ。
そう謂いつつもなかなか楽しそうじゃねぇか。
そんじゃぁ一杯頂こうかね。
[にやっと笑い頷いた]
[湖水の瞳と視線が合った。
片目を細めて笑って見せる。]
はぁん、お犬様に吼えられるたぁな。
お前さんの使い魔かい?
挨拶なんざかたっくるしいこたぁ気にすんなや。
飲まねぇかい?
[冗談めかして声掛けた。]
司棋の兄さんは今宵も遊んでお呉れかえ?
人の集まるは厭うなら二人で何処ぞへ時化こもうかネェ。
[コロコロコロリ] [笑う声] [下駄の音]
[しゃなしゃなり] [歩み寄り] [しゃがみ込む]
可愛いネェ。
嗚呼、良い、好いヨゥ。
お前さんはきっと利巧なんだろうさァ。
[少年の連れ] [犬の傍ら] [しゃがみ込み]
[そぅと伸ばす] [白い手] [耳の後ろを撫ぜ様と]
咲き誇り枯れ果て巡り巡ってまた咲くが華ってネェ。
アタシに枯れ華が似合わぬなら。
司棋の兄さんがまた見立ててお呉れかえ?
[笑みを見上げ] [小首傾げ] [覗く] [互い違いの双眸]
[弧を描く碧] [枯れた華] [常盤色に映り] [揺れるか]
[現世に此の姿でいるのは初めてで。
人が飲む酒なぞ見たこともなく]
それでもお初の方にいきなり馴れ馴れしくはできませぬ。
司棋と申します。以後お見知りおきを。
…「酒」…とは…僕が知らないものでしょうか…?
なら…遠慮させて頂きたく。
どういうものかもわからないものを
いきなりおいそれとは…。
それと犬と呼ぶなら夜斗と名を呼んでやってください。
どうせ二文字、変わらぬでしょう
[夜斗は既に平常に戻ったけれども。...は僅かに瞳が揺れ]
[紅い男へ移る] [碧の眼差し] [薔薇色の唇] [笑んだ侭に]
[犬の傍ら] [しゃがんで] [男を手招く] [白い手] [ひらり]
そうさァ、アタシも難儀さァ。
袖振り合うも縁なら、呪い解けぬも縁じゃないかえ?
酒でも酌み交わして楽しもうじゃないかィ。
[赤の少年] [紅い男] [視線は往復] [コロリ笑う]
そンなら皆で飲むのも一興さァ。
其処往く兄さんも一緒に如何かえ?
[紛れる人型] [新たな気配] [下駄の音捉え] [瓢箪掲げ]
華ぁねえ、
華はいいやな。
似合いそうじゃねぇか。
なぁんて、人間はこういう風に謂うのかねぇ?
[赤い少年、湖水の瞳に眼を細め]
律儀なヤツだぁなあ。
まあお前がそうしたいってんならそうすればいいさ。
得体が知れないから駄目ねぇ。
そいじゃあ俺が呑ませてやろうか。
俺が呑んだんなら安心だろう?
[にっと笑って嘯いて、
それからちらっと夜斗を見る]
ほうほう、お前夜斗ってのかい。
名前があるのにお犬様はねぇわなぁ。
そいつぁ悪かった。
[夜斗は撫ぜられるままに真理に懐き。
...も眼を細めてそれを見る]
夜斗、良かったな、沢山撫ぜてもらって。
また、お礼の華を差し上げましょう。
この華は貴女が望めば何時まででも咲きますよ。
僕達のような者が自然の摂理なぞ従う必要はありませぬ。
用が済んだら一言華へ、礼でも言ってあげて下さい。
さすれば跡形もなく、静かに消えますから。
では、どうぞ。
[少しだけ身を屈め、夜斗を撫ぜる真理の結い髪に掌に浮かんだ蛍火を零す。
光が触れたその場所にまた小さな華が愛らしく咲いた]
[祭の喧騒の中。
――妖しの気配。]
……おやおや。「人ならざるもの」がこちらにも。揺らめく色がひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ……。
美しい色。儚き色。
揺れる、揺れる……。
[下駄を微かに鳴らし、吸い込まれるように「人ならざる影」に近づいてゆく。]
[「呑ませてやろうか」の一言に、小さく笑い]
それは親切心でしょうか?それとも何か下心でも?
あったとしても何も差し上げられませんが。
お付き合いならいたしましょう。
興味がないとはいいませぬ。
[紅い男の言葉] [長い睫毛瞬き] [また] [コロコロコロリ]
アタシは今しか判らぬから、褒めて呉れるンなら何でも好いヨゥ。
司棋の兄さんはアタシの酒なら呑んで呉れるかえ?
[チャプリ] [瓢箪揺らし] [華揺らし] [見上げる少年]
[犬に向き直り] [耳の後ろを撫ぜ] [犬より先に眼を細め]
佳ゥし、佳し。
夜斗は可愛いネェ。
[伸べられる手] [顔を上げ] [浮かぶ笑みは艶やか]
[緩く首振り] [薫る白粉] [桜の色香は際立つばかり]
アタシは刹那に遊ぶ者、永劫の時は判らないヨゥ。
こうして司棋の兄さんが、次逢う時もアタシを飾って呉れりゃ好い。
其れなら華は綺麗に咲き誇るさァ。
[くふん、と真理に懐く夜斗。ふと夜斗が顔を上げる。
つられて見ればまた一人の男性。
否、自分らと同じモノというべきか]
おや…。また新しいお人が。
どうも、今晩は皆月に呼ばれたのか、ここまで集まるとは。
下心なんざ在るわきゃねぇって。
この俺の親切心が分からないたぁ悲しいねぇ。
[言葉裏腹笑い笑い。]
別になんも欲しかねぇさ、
旨い酒が呑めればそれでいい。
酔うのはなかなか楽しいぜ。
血肉にゃない味わいがあるぜ。
[杯飲み干し舌なめずりで
仰ぐ空に雪洞ゆらり。]
そうかい、そうかい。
刹那に生きる常盤色ってか。
そんなら遠慮なく褒めるとするか。
いいね、其の華綺麗じゃねぇか。
なかなか小洒落た術だねぇ。
[澄んだ酒をもう一杯。
すいと少年に差し出した。
そのまま眼だけを動かして、
新たな影にまた笑う。]
おやおや賑やかだなや。
艶やかな御仁が増えたとみたね。
[結城紬の袖をついと上げ、唇を隠すような仕草を見せる。紅を纏った視線をそっと動かす。]
ええ……
全ては美しいこの月のせい……。
罪深きは、月の光。
[袖の奥で、微かに笑った。]
[返された言葉に苦笑しつつ]
それは失礼を。
しかし釘を刺さねば食われてしまいそうな雰囲気でしょうよ。酒もそう悪くはないのでしょうが。
ではお相手しましょう。こちらも随分とたしなまれる口のようですし。
[差し出された杯を受け取り、一口だけ。度は低いだろうが焼けるような感触にやや柳眉を顰め]
けほ…。
[酒に噎せる赤髪の少年を見て、遥月は目を細める。]
……おやおや。
いけませんよ、御酒で無理をなされては。
もっとゆっくり、一気に呑まずに、そうっと舌に触れるだけがよろしゅうございましょう……
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