![]() | 教師 イザベラ ―― ウェンディが浄化対象に指名された夜、エレノアは泣き叫び、娘に何を莫迦なことをと罵り、代わりに自分がと申し出て来た。 しかし、それを認めるわけにはいかない。 シャーロットはギルバートに目配せをし、母であるエレノアをウェンディから引き離して貰った。 そのまま村に連れ帰るように言ったのだが……鳥居のすぐ外に目に見えない壁のような物が出来ていて、エレノアを抱えたギルバートは石段を下りていくことは出来なかった。調べてみると、社の周り全てが同様な見えない壁で覆われていた。 アーヴァイン教授の残したメモをイザベラが読み上げた所によると、それは浄化の儀を終了すると共に解除されるとのことで、実際ウェンディの首に縄を掛け、足場を外した後には無事下山が出来るようになっていたのだった。 |
(1659)2006/07/31 11:09:34 |
![]() | 教師 イザベラ メイが数日前のことを思い浮かべていると、モーガン老から重々しい声で返答が返る。 「構わんぞ、この老いぼれの命と引き替えに、ソゼを再び封印できるというのならな。 月の神官を名乗った時からこうなることは覚悟しておったから、私の事は気にせんでええよ」 モーガンは深いしわが刻み込まれた温かい手で、メイの頭を優しくなでながら言った。 メイは目の奥が熱くなるのを感じ、それが堰ききらぬようにゆっくりと蓋を下ろしたが却って逆効果だった。 (ダメ、泣いちゃ。 わたしがしっかりしないと。 ……でも、シャロさんは今までずっとこんな思いを味わってきていたんだ……わたし……) 「おぉ、泣くことはないぞ。 ほれ」 モーガンはメイに清潔な木綿のハンカチを渡し、涙を拭うよう促す。 |
(1660)2006/07/31 11:10:30 |
![]() | 教師 イザベラ 驚き、よく見ようと光を巡らすと、照らされた先をシャーロットらしき影がよぎる。 「シャロさんっ」 メイがそれに気付き、袋に手を触れる。 生暖かい水で満たされていたそれは不思議な感触だった。 目を近づけてよく見ると、確かにシャーロットが一糸まとわぬ姿で、いや、彼女だけではない、ミッキー、ネリー、ヘンリエッタ、……埋葬された筈のナサニエルや、ソゼに憑かれていたウェンディ。 そして、ソゼに襲われ目の前であぶくと消えたアーヴァイン教授やヒューバート。 そして、アーノルド、デボラなどの消えてしまった村人もその中に漂っていた。 だが、彼らからは生命の灯火は感じられず、マネキンかなにかのようだった。 |
(1683)2006/07/31 11:31:26 |
![]() | 教師 イザベラ 「この繭を開ける方法だけど、アーヴ教授の引用した一節を解釈したメモがあるよ。 条件は夜明け、太陽が顔を見せた時だね。 その時に、メイが繭に触れてシャーロットを呼べば良いのかな? 水の力がどういう物か、わたしはわからないけど、何か共鳴する物があるんだよね、きっと。 それでロッテ嬢の事を呼んであげると良いのだと思うよ。 ……なんだか、凄く曖昧で申し訳ないけど……。 強制的に刃物で切り裂くなどはいけないらしい」 「というのは?」 「まだ、この中を漂っているのは肉の塊に過ぎないって事じゃないかね。 このまま切り裂いても魂のない肉塊が転がるだけだろうさ」 |
(1688)2006/07/31 11:35:15 |