自警団長 アーヴァイン
ふむ……まだ集まっていないようだな。 今のうちに、もう一度見回りに行ってくるとしよう。
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雑貨屋 レベッカ まったくぅ、やってられないわ。 何がキミみたいな優秀な人はなのよ。 体の良い厄介払いじゃない。 もぅ、くさくさするわね。 ―― あたしはバッグの中の鍵を探り、扉にカチリと差し込んだ。 そこはいつもの暗く冷たいアパートの部屋……の筈だった。 しかし。 ん〜、電気のスイッチは……あれ、おっかしいなぁ。 ―― いつもの場所にスイッチはない。 そして部屋もいつもより数倍広いような気がした。 なんだろう、この違和感は。 あたしは神経を研ぎ澄まし、暗闇の中に何かを見て取ろうとした。 と、炎のような真っ赤な巻髪の少女が闇の中に浮かび上がった。 いや、闇の中というのは正確ではない、部屋の中央とおぼしき箇所には丸テーブルが置かれ、燭台の上には蝋燭が橙色の光を辺りに投げかけていた。 少女はテーブルの上から鍵を一つつまみ上げると、「再び、あえるだろう」との言葉を残し、奥に見える 10の扉のうちの一つへと消えていった。 あたしがその様子を亡として見ていると、今度はもっと小さい金の髪を持つ少女が現れる。 そして同じように鍵を取り、今度は「終わりは始まり」との言葉を残し、猫を抱いて再び扉の奥へと消えていった。 これは一体……。 あたしは今の光景があまりに幻想的でそれが現実なのか判別できなかった。 いや、現実であるならば、此処は小さなボロアパートの一室の筈だ。 それなのに、こんなだだっ広くて更に奥に別の部屋まであるような場所が現実のものであるわけはない……そう、理性は断じる。 しかし、感覚では、これこそがあたしが棲む世界ではないか……そんな思いが断ち切れないのだった。 あたしは、光に引き寄せられる蛾のように、中央のテーブルへと歩を進めた。 | |
(9)2006/10/03 04:16:20 |
雑貨屋 レベッカ ―― テーブルの上には10の鍵が乗っている。 そして、燭台の隣に白く毛並みの良い猫がのんびりと横たわっている。 あたしは、その猫……女の子みたい……を見て少しだけ撫で、次いで鍵を手に取ってみた。 鍵には、先ほど幻のように現れ、幻のように消えていった二人の少女が発した言葉と同じ言葉が刻み込まれた鍵がある。 残りの8本の鍵にも、それぞれ別の言葉が刻み込まれていた。 色とりどりの毛糸が鍵に結びつけられ、丁度首から提げることが出来るようになっている。 なんだか小学校の頃を思い出すわ。 両親が共働きで……鍵をこんな風にして持たせられていたっけ。 あの頃は、団地の鉄の扉を開けると、誰もいないシンとした空間が広がっていて。 人恋しかった。 だから、鞄を置いてすぐに遊びに出かけたりして……寂しい部屋が耐えられなかったのよね。 だけど、いまもあんまり変わってないかも。 そんなことを考えながら、指で鍵を幾つかもてあそんでみる。 | |
(10)2006/10/03 04:28:23 |
雑貨屋 レベッカ ふふ、こうしておけば、なくすことはない……か。 奥の部屋のどれかがこの鍵に合う部屋なのね。 ……猫ちゃんも一緒に行く? と、眠っている猫に声を掛けるが、ゆっくりと呼吸に合わせた動きを感じるだけで、これと言った反応はなかった。 あら、残念。 だったらまた起きているときに……。 まずは部屋に行ってみましょうか。 あたしはそうっと足を進め、10の扉の内の一つの前へと立った。 どうしてだか分からないが、この扉に呼び寄せられた気がしたのだ。 きっとこの鍵がぴったりの筈。 あたしは何故だかわからないけど、そう確信していた。 扉へ鍵を差し込むと、カチリと噛み合う音がし、くるりと鍵を回すとガチャッっという音が聞こえてきた。 そのままノブを摘んで回すと、扉が手間へへと開くのだった。 あたしは、扉をくぐって奥の部屋へと進んだ。 | |
(12)2006/10/03 04:45:18 |
雑貨屋 レベッカ ほの暗い部屋の中でうっすらと目を開ける。 久しぶりにゆっくりと眠れた気がする。 あたしはぎゅっと全身で抱きしめていたワニのぬいぐるみを離し、ベッドから抜け出した。 キミのおかげかな? ゆっくり眠れちゃった。 あなたの……名前、なんて言うんだろ? あたしが付けちゃっても良いのかな。 そう話しかけると、ぬいぐるみが黒く光る目をこちらに向けてこくりと頷いたように感じる。 そう……そしたら。 ん〜、そうね。 白いワニ、シロ、シロさん、クロコダイル、……シロクロ。 うん、シロクロ。 シロクロってどう? ワニのぬいに向かってそれでいいかと確認すると、 「ありがとう、良い名前だね」 そう言って貰えた気がした。 | |
(14)2006/10/03 13:05:03 |
雑貨屋 レベッカ (21)お嬢様 ヘンリエッタ (2006/10/04 02:07:21) …鍵。扉を開く物。私を開くもの。 閉じられた部屋を解放するもの。 …誰か、いるだろうか。 [ふぅ、と小さなため息をつくと...は、暗い闇の中、手探りで扉をあけた。 開くと、目前の広間には自分が火をつけた燭台が、ぼう、と周囲を照らしている。戸惑って、立ち止まる] 猫…と、人? [...は、目をこすって左右を見回した] 鍵…を取って、部屋に入って、そして? [...は一度この部屋に入った。寒さに耐えかねて、燭台を灯し、テーブルの上の鍵を手に、10ある部屋の一つに入った。そして、ベッドに潜った覚えがある。しかし目の前には取ったはずの鍵があった。] …落としたのかしら。 | |
2006/10/04 06:43:54 |
雑貨屋 レベッカ お嬢様 ヘンリエッタは、メモを貼った。 (2006/10/04 02:14:57) レベッカさん、こんばんは。 ごめんなさい、何だか閉鎖までにもう少し時間がありそうなので、他の村に入ってみようかとうろうろしていました。 まだ別村入っていなかったので戻って来ました。これからよろしくです〜。(ぺこり ちなみに私は深夜族なので不定期参加です〜。お会いできると嬉しいです。 | |
2006/10/04 06:45:06 |
雑貨屋 レベッカ (22)お嬢様 ヘンリエッタ(2006/10/04 02:31:04) [...はもう一度鍵を手に取った。誰に導かれるでもなく、自分の為にある鍵を。書かれた言葉を見て、もう一度口の中でつぶやいた] 「終わる場所で始まるだろう」 …終わりが、始まり。誰にとっての?私にとっての?世界にとっての? ここは世界の果てなのかな…寒い。 [...は自分を凍えさせる物が孤独だとはまだ気付いていない] 私はなんでここにいるんだろう…。集められた?誰とも言えぬものに?拐かされた? …全く分からない。 …お父さん、お母さん。こんな場所になら出てきてくれるかな。足が無くてもいいよ。抱きしめて欲しいよ。 私を抱きしめて、一人じゃないよって、言って…。 | |
2006/10/04 06:46:36 |
雑貨屋 レベッカ お嬢様 ヘンリエッタは、カタッ、という物音に怯えて体を硬くした。(2006/10/04 02:32:18) (23)お嬢様 ヘンリエッタ(2006/10/04 02:41:33) [猫が尻尾で鍵の一つを落としてしまった音だった。表情を緩めて、鍵を拾う。 何か書いているはずなのに、自分にはその文字は読めなかった] こら、悪い子。 [鍵をテーブルに戻し、くすっと猫を見て言うと、その隣の椅子で寝ている娘が身じろぎした] …この人、誘拐犯? ううん、そんな感じはしない。 私と一緒に誘拐されちゃったのかな。でもなんだか幸せそうに寝てる。いいな、 いい夢を見ているのかな。 [...は一人で部屋に戻る気になれず、うろうろと部屋を動き回ったあげくにソファを一つ頂いた。...にとっては十分なベッドである。毛布を引っ張ってきて、ソファに横になると毛布を頭まで被った] | |
2006/10/04 06:51:04 |
雑貨屋 レベッカ …寒い。 [小さなつぶやきが一つ。そのまま、部屋に静寂が*戻った*] お嬢様 ヘンリエッタは、雑貨屋 レベッカに話の続きを促した。(2006/10/04 02:49:58) お嬢様 ヘンリエッタが村を出ました(2006/10/04 02:50:04) | |
2006/10/04 06:51:42 |
雑貨屋 レベッカ がくりとした落下感にあたしは目を覚ました。 また……うとうとしてたんだ。 頬杖が外れて顎が重力に引かれたのだった。 なんだか幸せな夢を見ていた気がする。 あれは……そう、パパとママとでピクニックに行ったときの事。 お弁当を一緒に作って……サンドイッチだったな。 あたしもバターを塗ったり、ハムやキュウリを挟んだりって。 そして、お出かけ。田圃には蓮華の花。 白と紫と緑の入り交じった絨毯。 畦道を渡り、向かいに辿り着き少し歩くと階段状に整備された遊歩道。 あたしははしゃいで一人だけ先に駆けていって、パパとママが追いついてくるのを待っていたっけ。 木の葉が揺れる音、木々の向こうに覗いている青空、少ししめってヒンヤリとした空気、登り切った先の展望台の眺望。 辺りには同じような家族連れが居て……それから。 なにか……何かあったような気がするんだけどな。 そして、場面は変わる。 あたしは、自分の姿を遠くから見ていた。 | |
(24)2006/10/04 08:58:00 |
雑貨屋 レベッカ 丸テーブル、椅子、燭台、橙の光に照らされ、椅子の上頬杖を突いて眠るあたし。 大きく伸びをして少し歩いては丸くなる猫。 黒い四角い裂け目が空間に現れる。 扉? 見えない扉。 最初に見た巻髪の少女がそこをくぐって再び室内へと現れる。 眠っているあたしを見つめてそっとテーブルから鍵を取り、言葉をつぶやいた、今いる場所からは聞こえない筈のそれは何故かはっきりと、こう聞こえた。 「終わる場所で始まるだろう」 ……あれ? あたし……記憶が混乱している? それとも最初に見たと思ったのがごっちゃになっていたのだろうか。 たしかに、あれは亡として曖昧だった……だけど、今見ているのは輪郭もはっきりと見て取れる。 愛らしい顔の中に不安を押し隠している彼女に与えられた言葉。 少女は鍵を手に取った後、広間を歩き回り、やがて一つのソファの上で眠りこんだのだった。 あたしは、勢いよく立ち上がる。 椅子が倒れ、派手な音を立てると、猫がびくっと身を竦めた。 今のは本当にあったの? なら…… | |
(25)2006/10/04 09:00:12 |
雑貨屋 レベッカ それならば、あのソファにはあの子がいる筈……、一人っきりで寒さを感じているあの子が。 あたしは、部屋の片隅のソファへと向かう。 ……毛布。 ソファには毛布が掛かっていた。 本当……だったの? これでもう寂しくなくなるの? ゆっくりと近づいていく、だが、そこには平たい毛布がただあるだけだった。 毛布に手を当ててみるとまだ暖かい。 何者かの温みが残っている。 まるっきりの夢……ってわけでもなかったのかな。 だけど、彼女はどこに。 また幻のように消えてしまったのだろうか。 期待していた分だけ、落胆は大きかった。 胸のつっかえが黒く育つ。 やがてそれはあたしを蝕み心を元のように凍らせるだろう。 寂しくなんて……ないもの。 自身をそう欺く。 あたしはソファに座り、自分以外の温みを感じさせる毛布を握りしめて、目を閉じた。 | |
(26)2006/10/04 09:29:02 |
雑貨屋 レベッカ ◆◆ 見習いメイド ネリー が参加しました。 ( 4):発言:見習いメイド ネリー @1 2006/10/02(月) 01:53:18 ---------------------------------------- にゃぁん。 ここどこかにゃ〜? [どこからか、一匹の子猫が現れた] ふみゃぅ〜。 [猫はてぽてぽとテーブルによじ登って、きょろきょろとあたりを見回した後、ぽてっとテーブルに突っ伏した] *** 見習いメイド ネリーは、「うにゃ〜ん♪」とテーブルの上でくつろいでいる。 -- 2006/10/02(月) 01:58:59 | |
2006/10/05 09:48:04 |
雑貨屋 レベッカ ( 8):発言:見習いメイド ネリー @1 2006/10/02(月) 03:45:13 ---------------------------------------- うにゃん? [ちょっとうとうとしていたら、いつの間にか抱えられていた] ふにぃ。 まーいいのにゃ。 [子猫は首を傾げていたが、へにゃんと警戒を緩めてすりすりごろごろ→*眠った*] | |
2006/10/05 09:48:45 |
雑貨屋 レベッカ ( 18):発言:見習いメイド ネリー @1 2006/10/03(火) 14:00:48 ---------------------------------------- くわぁふ… [大きなあくびをしながら目を覚ました] ふにゃ? しらにゃいおねーちゃんがいるにゃ ( 19):発言:見習いメイド ネリー @1 2006/10/03(火) 14:02:50 ---------------------------------------- んにゅ…ま〜いいにゃぁ [寝直し] | |
2006/10/05 09:49:22 |
雑貨屋 レベッカ そういえば、あの巻髪の子は他の鍵の言葉が分からなかったようだったけど、あたしは形を与えられた鍵は読める。 これは何の違いなんだろ? なにかきっと意味があるはずだわ。 人の鍵の言葉が分かることには。 だけど……うん、いずれわかるよね、今考えても仕方ないわ。 | |
2006/10/05 09:56:00 |
雑貨屋 レベッカ あら……また? 何処までが現実だったのだろうか、「あおい」気配を手招いて……それが鍵を手にしたとたん、指先から実体化して青年の姿を取った……ような気がしたがどうにもはっきりしない。 でも……、 視線を動かすとコーヒーがガラスのポットに入っていた。 そして、膝に畳んで置いていた筈の毛布が肩から掛けられている。 あたしは期待を込めてテーブルの上に目を凝らす。 等間隔に並べてあった鍵に一本抜け落ちた箇所がある。 数を数えてみると、8本。 一本減ってる。 ならば……ええそうよ、きっとあの「あおい」気配がここを訪れたのだわ。 そして鍵を取り、対応する部屋へと去っていったに違いない。 その時あたしは何をしていたのだろうか。 思い出そうとしたが……もやもやとしてどうにも定かではなかった。 とまれ、他に誰かが居ることは間違いないようね。 あたしはそのことを確信し、少しだけ安堵した。 | |
(39)2006/10/07 01:29:06 |
雑貨屋 レベッカ あたしは、10の扉を一通り見回した。 まずはあたしの部屋……あれ? なにか違和感がある。 扉の一部が薄く光を発しているように見える。 近づいてみると、いつの間にかネームプレートが掛かっていた。 レベッカ・ミストレイク……ゴシックでそう刻み込まれている。 これが光を受けて光っていたのね。 一体何時の間に? 最初に部屋に入る時にはなかった筈。 とすると、そこで一晩過ごした後……ってことかしら? いずれにしても、これでどの部屋が使われているか判るという訳か。 あたしは、一旦部屋に戻り毛布を畳んでベッドの上に置くと、シロクロを抱き上げて部屋を出た。 なぜだか連れて行った方が良いような気がしたのだ。 部屋から出て、どこか他にプレートの出ている扉はないかと見回すと、テーブルを挟んで真向かいの部屋に薄蒼く光るプレートが掛かった部屋を見つけた。 | |
(41)2006/10/07 02:34:51 |
雑貨屋 レベッカ あたしは広間を縦断し、その部屋の前へ立つ。 刻み込まれた文字はなんと書いているのか読めなかった……異国の文字? もしかして会っても言葉が通じないかもしれない……そう思ったが、おぼろげな記憶では彼の発した「運命」という言葉は聞き取れたと思う。 この鍵……のおかげなのかしら? 何となく大丈夫そうだと感じ、左の手でシロクロを抱きしめ、残りの手で扉をノックする。 こんばんは……、あたしは……レベッカ、レベッカ・ミストレイクって言います。 コーヒーごちそうさまでした。 とっても美味しかった。 あの……もし、お休みでなかったらお話ししませんか? ノックの音とあたしの声は、扉の向こうへと吸い込まれていく。 ……どうだろう、声は届いたのだろうか? あたしは扉の前から避け、扉が開くのを待った。 | |
(42)2006/10/07 02:45:23 |
雑貨屋 レベッカ しばらく待っているとカチャリと音を立て細い隙間が空き、ゆっくりとそれが広がる。 夢うつつの中で見たのと同じ顔がそこにあった。 あたしはシロクロを胸に抱え、中から出てきた青年の顔をじっと見つめる。 鋭い目……だけど、どこかに何かを置き忘れてしまったかのような寂しさを奥に仕舞っているかのようで、そう、まるで森の奥の忘れ去られた湖のような深く蒼い色をしている。 肌はほどよく日に焼けていて、よく見ると細かな皺が見えるが、加齢のせいと言うわけではないようだ。 一日の大半を日差しの強い野外で活動していたのだろうか。 視線を少し下に移すと、シャツの下には厚そうな胸板が、上着から覗いてる腕にはみっしりと筋肉が張り付いており、彼が常日頃躰を酷使していることが見て取れた。 何か言おうと思ったが、目の前の彼の存在感に圧倒され、ただシロクロを強く抱きしめるしかできなかった。 何か、何か言わなきゃ。 焦る程に頭は白くなり、口内は乾く。 あの……あたし、レベッカ・ミストレイクって言います。 貴方のお名前を伺ってもいいですか? あたしはそれだけ延べるのが精一杯だった。 | |
(44)2006/10/07 15:23:23 |
雑貨屋 レベッカ あたしは青年……、ナサニエルさんの招き入れるまま、彼の部屋へと入った。 扉を閉じ、周囲を見回してみる。 部屋の隅に硬そうな長椅子状のベッドが一つ、シーツは小さく畳まれ、枕と一緒に隅に避けてある、それと小さなテーブルに洗面台。 天井にはパイプがうねうねとはい回っている。 壁と床はコンクリートで窓にはガラスではなく格子がはまっており、そこからは陽光が薄く差し込んでいた。 まるで監獄のようだ……とチラと思う。 あたしはそこで少し違和感を感じる。 えっ……外? あたしの部屋にも広間にも無かった窓、それがここにはある、そこからの光。 そして窓の隣には扉が……。 それを見たとたん心がざわつく。 広間とその回りの部屋だけが世界の全てでは無かったのか? それとも、この外には広大な世界が広がっていて、あたしはその片隅で右往左往しているだけなのか。 あるいは、部屋とセットになった作られた世界なのか……。 そのことがとても気になったが、それを押さえ、彼の薦めるままコーヒーカップを手にして、ナサニエルさんの隣に掛けた。 | |
(46)2006/10/07 16:31:27 |
雑貨屋 レベッカ 彼は、人一人分くらい離れた所に座り、あたしの顔をぼうっとして見ていた。 上の空であたしの言葉に、「ああ」とだけ応えまたしばしの沈黙。 あたしは会話の接ぎ穂もなく、また……扉と窓に視線を走らせた。 コトリと音を立てカップをテーブルに置いたのが合図として、彼は頭をふるふると振りあたしに語りかけてきた。 扉が気になるのか……と。 あたしは、 ええ、扉があるって事は「外」があるって事よね。 正直言ってここに「外」なんて無いと思っていたから吃驚したわ。 あたしの部屋には窓無かったもの。 一目見た時は神経の尖った野生生物のような印象を受けたが、こうして話してみると、意外と気さくなのかな。 そう思い、薄くほほえんで返す。 何処に繋がっているかわからないって事は嵌め殺されているわけね。 あの明かり取りの窓から何か外見えるかしら? あたしが見た時はただ光しかなかった。 でも、彼の部屋だから。 彼なら世界に姿を与えることが出来るのではないか。 そう期待して訊いてみる。 | |
(49)2006/10/07 17:10:24 |
雑貨屋 レベッカ ううん、さっき部屋に入った時にちょっと見た時は何にも見えなかったし……。 なんだか恐い気がするからやめておく。 あたしは、あまり訊いちゃいけない事だったのかもと後悔し、その話はそこで切り上げることにした。 また沈黙が流れる。 それに耐えかねるようにあたしは口を開いた。 あの……さ、ナサニエルさんはどうやってここに来たの? あたしは…… 強引に言葉を紡いでみる。 あたしは、新しい辞令が下ったこと、それが出世とは名ばかりの物だったこと、元のポジションにはつきあっている彼氏が後釜であること、バーで独り飲んで酔っぱらって家に帰ったらいつの間にかここにいたことなどをぽつりぽつりと話した。 彼は所々によく分からない単語が在ったようで都度聞き返してきたが、軽く頷きながらあたしの話しを聞いてくれてた。 話しているうちにその時の嫌な気分を思い出し、表情が沈むのを感じていた。 それで……あなたは? 手をシロクロに添え、瞳を見つめ、訊ねる。 | |
(51)2006/10/07 18:21:09 |
雑貨屋 レベッカ いいのよ……いやだったら無理には訊かないから。 あたしはそう答え、カップを手にベッドから立ち上がる。 コーヒーありがと。 カップ洗っておく。 片膝を立て顔を背けている彼をそのままにし、粗末な洗面台でカップを流し、布巾をかける。 何処に直したらの声に彼が指さしたテーブルの上にカップを逆さにして置くと、 扉をくぐり広間へと出、また……コーヒー入れて貰って良いかな。 と、声を掛けた。 ナサニエルさんがこくりと頷いたのを確認し、シロクロを抱いてるのと反対の手で扉を閉じる。 その間際に見た窓からはは同じ調子で光が差し込んでいる。 さっきから大分時間が経った筈なのに、やっぱり変。 そんな事を思いつつ、あたしは自分の部屋へと戻った。 | |
(53)2006/10/07 19:29:45 |